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失せものメモ

なにごとか書く

YG-5.5-4s

川上弘美の『猫を拾いに』を買った。古本屋で。
ページの間に押し葉が挟まっているのを見つけてしまったから、レジに向かわずにはいられなかった。
薄紙でもなく、ただのティッシュに包まれた、ちいさな四つ葉のクローバー。茎が長くて、少しだけ褪せた優しい色をしている。

想像するのはたのしい。
クローバーを挟んだ人と本を売った人は同一か。クローバーを見つけた人と押し葉にしようと思った人は。本の持ち主だった人とクローバーを見つけた人は?
クローバーの生えていた場所。公園か、川辺の原っぱか、街路樹の根元か…。
まだ肌寒い午後、よく晴れた朝、夕方の帰り道。
たまたま見つけたのか、苦心して見つけ出したのか。
クローバーを見つけたことを、それを押し葉にしたことを、誰かに話したりしたのかな。

本も押し葉もまだ新しい。ページの間に挟まれてから私の手元にくるまで、そんなに時間は経っていないかもしれない。古本屋の店主が本棚におさめて、私がクローバーを見つけるまで、何人かがこの本を手に取ったかもしれないし、そのうち何人かはクローバーにも気づいたかもしれない。

すべての古本は"誰かの物語かもしれない物語"を持っていて、だからわたしは古本が好きだ。




これまでの忘れ物コレクション

•幸太郎さんの通勤定期(とっくに期限切れ、念のため)

•ボールペンで女性の横顔が描かれた紙製の栞(きれいな人で、心なしか思案顔のように見える)

•『戦場のピアニスト』のパンフレットに、映画チケット二枚(これは想像のパターンが無限大)

•買い物メモ(おそらく夕飯の食材)